みなさんの好きな歌手は誰ですか?
その歌手のどんな所が好きですか?
歌声なのか歌詞なのか、歌い手の生き様なのか。
一口に「好き」といっても、人によって好きなポイントは様々だと思います。
私も音楽が好きで、歌声はもちろん、短歌のように限られた枠の中で文学として表現される歌詞も好きです。
ひと昔前にVOCALOID(ボーカロイド)が流行った頃、合成された音声で人の心が動くのかと疑問を持った事もありましたが、その裏側には音楽を作り歌詞を作っている人がいて、ボーカロイドはプロデューサーの思いを拡声させるアンプの役割を担っているという事に気付いてから、受け入れられるようになりました。
古来より歌は人間の感情表現の手段として使われており、私も、作家が音楽に込めた感情に賛同なり批判なりで自分の人生を投映し、新たな感情を得るという楽しみ方をしてきました。
が、もしもそこに人間が全く介在せず、なんの感情も持たない音楽があった場合、それを聞いた僕は一体全体どんな感情を持つのだろう、という事について数年前から考えていました。
そして、ついにそんな時代がきました。
元女子高生AI「りんな」、エイベックスからメジャーデビューする。
日本マイクロソフトが4月3日、同社が展開しているAI「りんな」について、人間と同じようなより自然な歌唱が可能となり、歌声を生成する最新の「歌唱モデル」を採用したと発表しました。あわせて、共感できる作品を作ることを目的として、エイベックス・エンタテインメントと、AIアーティストとしてレコード契約を4月1日付で締結したことも発表しました。
まじか・・・
りんなとは
りんなは、日本マイクロソフトが開発した会話ボットで、女子高生という設定でLINEやTwitterで多くのファンと交流していました。
「いました」と過去形なのは、2019年3月に高校卒業を発表し、その去就が注目されていたからです。
いわゆる「チャットボット」として始まったりんなですが、その後人間の歌声データから抽出したブレス音の長さや強さ(音量)などの特徴を、ディープニューラルネットワーク(DNN)に学習させてオリジナル曲を歌う事まではできていて、
この時点では確かに技術力の高さに圧倒はされたんですが、私個人としては少し違和感があって、その理由が当時は分からなくて少し遠巻きに見ていました。
そして、今回発表されたのがこちらの曲です。
bachoのカバーやん・・・
この曲を聞いて、その違和感の正体が分かりました。
前回発表された曲は、あまり感情が感じられず、音楽の向こう側に「人」がいるように思えなかったのですが、今回の曲『最高新記憶』は、bachoというバンドのカバー曲で、私はオリジナルの方を相当な回数聞いていました。
よって、その曲のメッセージを解釈できており、今回、それを表現する歌手が人工知能になっても、音楽の向こうに人を感じ、ちゃんと感動することができたのです。
このカバー企画は3部作で構成されており、第1部は「記憶」を表現。次作は「生死」、最後は「感情」をテーマにした楽曲が発表されるそうです。
記憶がbachoなら、次のテーマである生死には、フラワーカンパニーズの『深夜高速』あたりが選ばれそうな気がしています。
既に音楽を生成するAIや、歌詞を生成するAIなども登場しているので、近い未来に「フルAI」化された音楽が発表されるんだろうな、などと思いながら、その向こう側に完全に「人」が存在しない音楽を聞いたら自分がどんな感情を覚えるのか、また一段と楽しみになってきました。