名古屋と東京を拠点に活動するAI開発会社のN2iが、革新的なIT技術と最前線のビジネス情報をお届けします。

ChatGPTやGeminiをはじめとする生成AIの登場により、「自社でもAIを使って新規事業を始めたい」と考える企業が増えています。特に愛知・名古屋エリアでは、製造業・商社・人材・不動産など現場を持つ企業が、AIを活用して事業化を模索しています。
しかし、実際にAIプロジェクトを立ち上げてみると、「期待だけが先行して、成果が出ない」「PoC(実証実験)で止まってしまった」というケースも少なくありません。本記事では、N2iが支援してきた実務経験をもとに、生成AIを使った新規事業で陥りがちな5つの失敗パターンと、その回避のポイントを紹介します。
1. 目的が曖昧になり、AI導入自体が“目的化”してしまう
もっとも多く見られる失敗の1つが、「AIを導入すること自体が目的になってしまう」ケースです。実際、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が公表した「企業IT動向調査2025」では、言語系生成AIの「導入済みまたは準備中」の企業割合が41.2%と前年から14.3ポイント増加したものの、詳細な効果測定を行っている企業が限定的であるという指摘が出ています。
https://juas.or.jp/cms/media/2025/02/it25_2.pdf?utm_source=chatgpt.com
この状況下では、「AIを使えば何とかなる」という思い込みが導入を早める一方で、実際の事業成果につながっていないというリスクがあります。
回避のポイント
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「なぜAIを使うのか」「誰のどんな課題を解決するのか」を最初に全社で定義する。
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導入目的を「業務効率化」ではなく、「新サービス創出」や「顧客体験向上」といった“事業価値”に結びつける。
2. PoC(実証実験)で止まり、事業化に進まない
次に典型的なのが、PoC段階で満足してしまい、本格展開に至らないケースです。たとえば、ある報告では、生成AIを導入した企業のうち約38.7%が「期待した効果が出なかった/PoCで止まった」と回答しています。
生成AI導入で失敗しないために!最新事例から学ぶリスクと対策を徹底解説 | WEEL
試作品が動いた段階で終わってしまうと、PoCの費用だけが発生し全社展開によるスケールメリットが得られません。
回避のポイント
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PoCの段階から「成功後にどう拡張するか」「いつまでにどの収益化段階に移すか」を設計しておく。
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成果を「数値(KPI)で測る」習慣を早期に醸成し、経営層に報告できる形にしておく。
3. チーム体制が属人的になり、運用に耐えない構造になる
AIを導入しても、運用を担う人材やチームが整備されていないと、プロジェクトが止まってしまいます。例えば「AIを扱える人材がいない」と話す企業が一定数存在しています。
1人の“スペシャリスト”に依存していると、その人が抜けた瞬間にプロジェクトが停止するリスクがあります。
回避のポイント
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AIプロジェクトを進める上で、少なくとも以下3つの役割を明確に分ける:
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業務設計者:業務課題を定義・可視化
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プロンプト設計者:生成AIへの指示文を設計
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管理者:効果測定・改善サイクルを回す
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チームとして、AIを“育てる”運用体制を作る。
4. データ整備を軽視し、AIの出力が安定しない
生成AIは強力ですが、入力されるデータの質・量・構造が整っていないと成果は出にくいです。
ナレッジマネジメントやFAQ整備をしていない企業では、AIの回答にブレが生じたり、誤回答のリスクが高まったりします。
回避のポイント
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社内マニュアル・FAQ・問い合わせ履歴などをまず整理し、AIの学習素材にする。
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機密性の高いデータはアクセス制限を設けつつ、検索・参照可能な状態に整備する。
5. 経営層と現場の“期待ギャップ”が原因でプロジェクトが停滞する
AI事業において、経営層の期待と現場の実態の間にギャップがあると、導入は途中で停滞します。たとえば、PwC Japanの「生成AIに関する実態調査2025春」では、日本企業において「期待を上回る効果を出した」と回答した割合は、米・英に比べかなり低いと報告されています
このように、成果実感が乏しい日本企業の多さが、導入スピードや拡大を妨げている側面があります。
回避のポイント
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AI導入の初期段階で「担当者・管理者・経営層」が共通のKPIを持つ。
例:月間開発時間〇時間削減、対応件数〇%増、顧客満足度〇点向上。 -
現場の声を可視化し、定期的に経営層へ進捗を報告する。
成功企業に共通する3つの習慣
N2iが支援してきた企業の中で、成果を出している企業が共通して実践していた習慣があります。
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小さく始めて確実に拡大
– まずは1部門・1業務に限定してPoCを実施し、成果を出してから拡大しています。 -
チームでAIを“育てる”
– プロンプトや改善ログを共有し、部門を跨いだナレッジ蓄積が進んでいます。 -
外部パートナーと伴走する
– 内製だけではリソース・ノウハウが不足するため、技術検証から運用設計まで支援できるパートナーを活用しています。
まとめ──AI導入の本質は“仕組みをつくる”こと
生成AIの活用は、もはや「導入するかどうか」ではなく、「どう事業化・運用するか」が問われています。
AIを“入れて終わり”にせず、「業務の流れにAIを組み込む」「運用できる構造を設計する」ことこそが、成功を分けるカギです。
愛知・名古屋の企業が持つ「現場力」と「地域ネットワーク」を活かしつつ、AI設計・運用を共創して進めることで、もう一段の成長が期待できます。
N2iでは、名古屋・愛知を拠点に、全国の企業様へPoC支援やAIエージェント開発を行っております。
「AIを事業として形にしたい」「PoCを超えて成果を出したい」などのご相談を歓迎しています。